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講座
手指の障害学(基礎編) 1.手指の機能解剖(1)
Impairment, Disabilities and Handicaps Related to the Hand and Finger. 1. Functional anatomy of the hand (1)
梁瀬 義章
1
Yoshiaki YANASE
1
1近畿大学医学部整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, School of Medicine, Kinki University.
pp.408-414
発行日 1986年6月15日
Published Date 1986/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103577
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Ⅰ.手指の表面機能解剖
1.はじめに
まず手指を構成する表面の基本的名称は図1の如くである.手掌は母指球部,手掌中央部,小指球部に分けられる.示指から小指までは三指節あり,各指関節は遠位部よりDIP関節,PIP関節,MP関節と呼んでいる.母指は二指節で,IP関節とMP関節である.他に中手骨と手根骨間の関節をCM関節というが,人間の手指の機能を考える上で母指のCM関節は特に大切である.
手指においては皮膚および皮下組織においても,手掌と手背で異なっている.すなわち手掌部の皮膚は厚く,皮下には弾力性のある脂肪組織が発達し,その下の手掌腱膜と密に結合し,手掌部皮膚の可動性を制限していると共に,深部組織を保護し物体の把持機能に便利になっている.手掌部の皺も皮膚を深層の組織に固定する作用がある.特に指皮線の部分は皮下の脂肪組織がなく,皮膚が直接深部の筋膜に付着しており,この部に瘢痕ができると深層の筋膜に癒着を来し,拘縮の原因となる.
手の皮膚を機能的単位に分類すると図2の如くである.
手掌面:
a:小指球部で,この部は皮膚の可動性が殆どない.
b:遠位手掌皮線より遠位部で,MP関節のレベルで蝶番の役割をしている.
c:手掌中央部で,可動性が少なく,手掌腱膜と密に結合している.
d:母指球部で,比較的血流がよく可動性も良い.
e:母指示指指間掌側で可動性は良好である.
手背面:
指節間関節(特にPIP関節)部が特殊で,伸展と屈曲時の緊張度に差がある.
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