プログレス
人工関節の最近の進歩―股関節を中心に
進藤 裕幸
1
1埼玉医科大学整形外科
pp.279
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103549
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人工関節の臨床への応用は既に今世紀初期から試みられ,1963年英国のCharnleyによる低摩擦性関節形成術(low friction arthroplasty)の確立以後現在では股関節や膝関節においては最も重要な手術の1つとして世界に広く普及している.ちなみに最も長い歴史と安定した成績が得られている人工股関節(股関節全置換術:THR)は,日本でも毎年約1万5,000例が行われているとされている.一方近年その長期経過観察例の中には少数ではあるが成績不良例がみられ,revision(再手術による修正という意味で人工関節の抜去や再置換手術をさす)を要する症例が術後10年経過例の約5%にみられる.これらのrevisionの原因の多くは人工関節の非感染性の“ゆるみ(loosening)”である.ここでは,この“ゆるみ”を防止する対策としての新しい知見の幾つかを紹介する.
1)手術手技の確立と改善:本点は臨床医のなし得る唯一,最重要なもので,正しい手術適応と手術操作に習熟することは不可欠である.特に対側股関節や同側膝関節の状態や脊椎変形の程度,下肢長差,骨盤の傾斜などの影響を考慮し,人工関節の各コンポーネントを理想的な位置と角度に設置することの重要性が改めて強調されている.また近年,人工関節を骨母床に錨着させる際のセメンティング技術に新たな改良が加えられてきた.
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