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Ⅰ.はじめに
作業療法士という専門職集団が何を基盤として患者を治療し,そして具体的にどのような実践をしているかを過去にさかのぼって知ることは,1つの専門職が現在どういう位置にあるかの認識と他の関連職種との関係において広い視野を持つうえで不可欠であり,将来の方向性を考えるうえでも重要な資料となる.その傾向を知るために,この分野で発表されたこれまでの研究論文を分析し,一定の状態像を明らかにすることが,もっとも良い方法である.
過去10年間の作業療法研究テーマを概観して欲しいという要望で執筆を引き受けることとなったが,これは本誌でも研究に関するトピックのなかで論しられてきているものである.ごく最近のものでは1983年の第10号における田川,関両氏1)による「作業療法研究の将来」のなかで詳細に検討されている.さらに,1980年第11号では冨岡2),宮前3)両氏により,各々精神障害分野,身体障害分野での研究テーマを分析している.これらの論文で対象となったのは,欧米においては米国作業療法誌(AJOT)に掲載された研究論文,日本においては日本作業療法学会誌の研究論文テーマであった.これらの雑誌の論文テーマおよびその内容は,作業療法の分野別(身体障害,精神障害,小児,教育,哲学,管理など)の分類,ADLや自助具など作業療法の機能の観点からの分類,さらに対象疾患や研究法の観点からも幅広く検討されている.今回与えられたテーマからすると,上記の論文と重複する内容になることは避けられない.そこで,今回はテーマのより具体的な内容について次の2点に焦点をおいてまとめることにする.
1.過去10年間の米国と日本における作業療法研究論文の分野別,領域別の観点から,評価,治療および基礎研究に分類し,その内容を検討する.
2.過去10年間において,作業療法の実践およびその理論的背景に関して,どのような変遷があったかを検討する.
調査方法:上記目的の1については,1975年から1984年までの日本作業療法学会誌に掲載された一般演題発表論文,および米国作業療法誌掲載の論文を対象とし,身体障害,精神障害,小児および教育の4つの作業療法分野に分類し,さらに各々の分野において(教育を除く),評価,治療,基礎研究の観点から機能領域別に整理を行った.さらに,これらの分野および領域別の論文数の割合について,米国と日本の比較検討を行った.
第2の目的については,1975年から3年毎の論文を対象とした分野別の論文数の変化,および各分野における主要理論の傾向を分析した.
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