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Ⅰ.序論
今日,がん看護の専門性がクローズアップされ,分化と多様化の時代を迎えている.1996年に日本がん看護学会が,日本学術会議の学術研究団体に登録され,同じ年に日本看護協会でがん看護専門看護師(OCNS)の認定が始まった.翌年からは,看護系大学院にがん看護専門看護師(CNS)育成を目指した教育課程を開いたところもあり,学生はがん看護を専門分野として選択できるようになった.そして,現在は専門看護師教育課程の審査が日本看護協会から日本看護系大学協議会に移されている.4年制看護系大学の増加に伴い,この教育課程を開く大学院数は増えるであろう.また,日本看護協会では6ヵ月間の認定看護師教育課程を設け,すでに,ホスピスケア,疼痛コントロール,ストマケアなどの認定看護師が臨床の場で活躍している.今後,がん看護の特定領域に焦点をあてた研究が量的に増加し質的にも深められることが推測される.このような状況から,現時点で過去の研究の成果を振り返ることは,今後の課題を明らかにする上でも意義があると思われる.
本稿の目的は,日本における過去10年間(1988〜1997)に出版されたがん看護実践領域における研究について,数量的側面からその動向を概観するとともに,この領域における今後の研究の方向性を明らかにすることである.すでに,過去10年間の日本がん看護学会における演題を対象とした,がん看護研究の動向1)(以下「がん看護学会の研究動向」とする)については報告がある.その結果は,研究の焦点がターミナル期から回復期まで広がってきたことを踏まえて,ケアの質をより高めるためには,実践における現象の記述と,科学的根拠を明らかにする実験・準実験研究が重要であるとまとめられている.本稿では,この提言を踏まえ,がん看護実践に焦点をあてた原著論文を対象とした.また,研究課題が明らかとなり,どのような看護現象に焦点をあてるかが決まると研究デザインの段階に進むが,この過程には,研究者のものの見方や考え方,すなわち研究者のパラダイムが影響を及ぼす.本稿では,この点も加味して,研究の概念枠組や研究方法などについても分析を加えている.そして,先行研究の分析項目にそった内容の比較も加えながら,わが国のがん看護実践研究を概観できるように配慮し,考察を加えた.
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