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特集 リハビリテーション医学の基礎―正常生理と病態生理
Ⅱ.機能障害の病態生理と回復過程
脊髄再生に関する研究概観
Current Studies of Regeneration of the Spinal Cord.
大島 峻
1
Takashi Oshima
1
1登別厚生年金病院リハビリテーション部
1Department of Rehabilitation Medicine, Noboribetsu Koseinenkin Hospital.
キーワード:
脊髄再生
,
循環改善
,
瘢痕抑制
Keyword:
脊髄再生
,
循環改善
,
瘢痕抑制
pp.966-970
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103897
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Ⅰ.脊髄再生の可能性
これまでに研究された種々の文献を総合すると,脊椎動物のうちでも魚類,両棲類,爬虫類などには脊髄の再生が認められているが,哺乳動物では,いったん切断された脊髄は修復されないというのが,常識であると考えられた来た.膨大な脊髄横断実験を行なったCajalらの研究からも,運動機能の回復と平行して再生神経線維が証明されたという報告はない.しかし横断脊髄が全く変性だけ生じて再生しないというのではなく,極く軽度には再生線維のある事は知られており,より良い条件の下では機能の回復にまでつながる可能性を示している.私自身も受傷後6時間で手術した横断脊髄の破片を病理学的に見てもらって,完全な壊死組織であって神経組織として再生に役立つ可能性が皆無に等しいという返事をもらったこともあり,又完全横断脊髄損傷の患者で6ヵ月後に症状固定と判断して車イスのまま帰宅させた患者が,1年後に歩行して外来を訪づれて,驚ろいた経験がある.
脊髄の再生というテーマは非常に興味をひくが,多くの人々の地道な長い努力の結果,今日ではそのいくつかの方法を臨床に応用して,脊髄再生の可能性を一歩も二歩も前進出来る時期に来ている.しかし一方では脊髄損傷(以下脊損と略す)患者の回復の可否を正確に判定することすら極めて難かしい.この機会に脊損後1年以上経た患者の予後調査からいかなる患者が回復し,いかなる患者が回復をみないまま症状固定しているのかを検討し,脊損回復の阻害因子を考え,その対策についての最近の諸家の研究を紹介したいと思う.
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