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Ⅰ.はじめに
運動は運動器の活動によって遂行される.従って厳密にいえば運動の発達は運動器の発達と,その運動器を操作する中枢機能の発達という二つの要素から成立する.この両者はもちろん不可分の関係にあり,全体として運動発達という一連の継時的現象を示していくのであるが,一般的には運動発達といえば,後者,すなわち中枢機能の発達と捉えることが多い.
ところでこの運動中枢機能とは,換言すれば運動の企図,計画,指令および調整機能である.運動は大別して随意的な運動と,それを支える自働的な運動調整機能とに分けられるが,この自働的な運動調整機能の発達こそが,初期の運動発達の根幹をなすものであるといえるであろう.
運動を“連続して変化していく姿勢”と捉えれば運動の,従って姿勢の自働的制御機能は複雑なものと考えられ,これらを“強制的自働運動”としての反射あるいはその反射の連鎖として捉えることには無理がある.しかし一般的には立直り反応群や平衡反応群も含む姿勢の自働制御機構を姿勢反射という用語で論じることが多く,ここでもその慣用に従うこととしたい.
また私見ではあるが,神経生理学的な考えが運動発達の臨床に導入された初期の頃,さまざまな運動発達の局面をあまりにも“反射”として捉え説明する傾向が強かったように思う.運動の発達を“反射・反応”的に追求し,解明していくことの必要性をみとめるにはやぶさかではないが,臨床の立場からはむしろ検査すべき反射テストの数を整理し,運動発達の種々相で示される運動の様式も,表現されたものそのままに理解した方がよいと思うようになってきている.
従って精緻な姿勢反射と運動発達の吟味は他の碩学の方にお願いするとして,ここでは臨床的な立場からの議論となることをお許しいただきたいと思う.
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