Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
ヒトの姿勢制御機構の発達は,受胎時より宿命づけられた部分と,生後の地球引力下で学習される部分からなることはすでに常識的となっている.おそらくは遺伝的に発達に手順が決められていて,ヒトとしての本質的運動要素(二足立位・歩行と空間における上肢の自由運動)を保証するための神経回路網が,普遍的基本構造から個性的多様構造まで,変化する外界環境に応じてプログラムされる仕組みと近年は考えられている1,2).
姿勢反射はこの過程でみられる重要な姿勢制御機能である.この分野の世界的先駆者である福田の研究3)によれば,最も効率的に最大限の筋力を一定の方向に発揮できる姿勢制御を担っているのが反射系であり,ヒトではスポーツ中にみられる非対称性緊張性頸反射(ATNR)の姿勢パターンがその代表例として挙げられている.さらにこのためには,同時に外力に対して姿勢を保持するための立ち直り反射や,運動遂行が維持できるための平衡反応等の姿勢反射の必要性が前庭器官を有する動物には共通の原則であるという.
この他の多くの研究は動物実験に基づいたものであり,運動遂行の機構はヒトも四足動物も同じであり,姿勢制御も系統進化の過程で同様の反射機構が当てはまるとされている4).
しかし,1960年代後半の脳性麻痺(CP)早期発見・治療の世界的趨勢は,より詳細な姿勢・運動の発達と脳の発達の関連性を,乳幼児の発達の分野に求めた5).以後約40年に亘り,新生児期からの姿勢反射の変遷と姿勢・運動発達との関係,さらに胎内における姿勢運動の変化が脚光を浴びることとなり,臨床的経験と進歩著しい脳科学における生理学的知見との照合が行われてきた.
これは,脳障害の患者が失う姿勢制御の症状から,逆に,正常姿勢反射の臨床的意味について考察する研究にも繋がっている6,7).
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.