特集 QOL(クォリティ・オブ・ライフ)
QOLの向上を目指して
精神障害者はどんな生活を望むか―体験を通して将来への希望
繁野 義雄
1
Yoshio SHIGENO
1
1より良い精神医療をめざすあすなろ会
pp.528
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103380
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最近の論調に次のようなものがある.『最近,精神障害者への偏見が徐々に薄らぎそうな兆しが現れ,若い人ほど偏見を持たず,また社会一般に,精神障害を特殊視する風潮が弱まりつつある』と.これは「精神障害者の社会復帰・福祉施策形成基盤に関する調査」1)を紹介したものでもある.確かにそうかもしれない.これは望ましいことではある.しかし,あまり強調しすぎると,取り残された部分を見落としかねないし,偏見とか差別,収容主義や隔離主義の歴史を正しく見なくなるのではないかとの危惧の念を持つ.将来を展望する場合,歴史を大切にして理解を深める必要を感じる.さてここでは,精神障害者はどんな生活の場があったら良いのかをケア付住宅(サービスハウス)を中心に考えたい.どのような障害者にとっても,働く場所,働くことにつながる場所と同時に,住む場所の確保は重要な問題であるが,精神障害者にとっては,とりわけ重要問題である.何故ならば,病気そのものではなく,受け入れ先がないために精神病院での生活を強いられているケースが,10年20年と長期に入院している人のかなりの部分にあるからである.また,私自身の体験からも精神障害者は人付き合いが大変へたであるし,生活の仕方がへたくそである.そのような理由からケア付住宅というものが望まれる.
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