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講座
心理学シリーズⅡ 知覚と認知 3.知覚の発達
Psychology Series Ⅱ. Perception and Cognition 3. Development of Perception
鳥居 修晃
1
Shuko TORII
1
1東京大学教養学部
1The College of Arts and Sciences, The University of Tokyo.
pp.645-651
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103158
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Ⅰ.研究の方法
われわれ成人は周囲の事物の大きさや形やその距離などを的確に,ほとんど即座に知ることができる.だが「嬰児の世界はすべてこれらの点において茫漠混沌としている」と説いたのはアメリカの心理学者W.ジェイムズ(James)であった.彼はその著書『心理学の原理』(1890)の中で,嬰児の知覚世界とは「花の咲き乱れる中を虫が飛びかっているような,一つの大きな混乱状態」であるとも書き記している.これに対して,1960年頃を境に,かなり多くの研究者がこのジェイムズの説に疑問を抱くようになってきた.その根拠は新生児について行われたいくつかの実験研究を通して次第に集債されつつある1).
しかしながら,それらのデータはまだ充分なものとはいえず,仮に,その知覚世界がある程度構造化されたものであったとしても,新生児が眼を開いたときからすぐに周囲の事物を何の苦もなく見分けているとは到底考えられない.事物を識別し,その形態を的確に把握する視覚の機能が最初から備わっているものではないとすると,それらは一体,いつ,どのような過程を辿って発生し,形成されたのかという疑問がここで起こる.
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