プログレス
分裂病の家族研究―家族システム論
牧原 浩
1
1市原鶴岡病院
pp.549
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102909
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1.はじめに(成因論的側面と力動論的側面)
1940年頃から盛んになった精神分裂病の家族研究は,「全体としての家族(family as a whole)」を問題とし,「病んでいるのは家族全体で,患者はその現れにすぎない」と考えられるに至った.既に今では古典的といえる二重束縛説(Bateson Gら),偽相互性(Wynne LCら).世代境界の混乱(Lidz Tら),といった勝れた仮説(1956年~1958年)には,この理念が込められている.
ところでこの3仮説には,分裂病の原因究明という病因論的側面が伺え,複雑な家族関係が究極にどう患者を犠牲者に仕立てたのかという,直線的な考え方がみられる.しかし同様に見逃せないのは,力動論的側面,今日でいうシステム論的な方向づけである.例えばWynneの偽相互性とは,個人の同一性の犠牲の上になりたつ家族の全体性を意味するが,この偽相互的な家族平衡を保つため,個が果す役割や相互作用が説かれ,勝れてシステム論的で前の病因論的みかたと次元が異なる.ここでは加害者と犠牲者の別なく,個人は等しく家族平衡維持のため相互作用しあうと考えられる.
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