Japanese
English
特集 精神分裂病の遺伝因と環境因
分裂病の家族研究の展望
A Review of Family Study of Schizophrenic
牧原 浩
1
Hiroshi Makihara
1
1市原鶴岡病院
1Ichihara Tsuruoka Hospital
pp.735-746
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202958
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
分裂病の家族研究ほど複雑多岐にわたり,しかも各研究者の間で厳密な一致の得られない分野も少ない。したがって,そのすべてを網羅しつつ展望を試みることは到底不可能であり,浅学な筆者のような者にとっては荷の重い仕事である。
そこで,筆者は主なテーマを3つにしぼり,その問題点を考えてみた。第一は分裂病の原囚を家庭環境に帰そうとする成因論的な家族研究である。第二は家族全体における各成員の布置や成員間の相互作用,それらが作りだす家族機能と家族構造などを問題とする力動論的家族研究である。この2つは重なり合う部分が多いが,厳密には区別して考えたほうがよいであろう。第三は分裂病の家族療法である。この最後のテーマは,今回の特集のテーマである遺伝と環境という問題とややかけ離れているかもしれないが,本来家族研究--ことに力動論的家族研究--と家族療法は表裏一体のもののはずであるから,敢えて触れることにした。
この第一から第三への順番は,ちょうど私の興味の焦点の移動と同じで都合がよい。しかしそれだけに無理な独断と偏見が生ずることを恐れるものである。
なお,分裂病の家族研究は元来遺伝論へのアンチテーゼとして出発したのであるが,今日では両者は必ずしも対立的なものとはみなされなくなってきているし,筆者もある程度はそう考えている。しかし,この拙論においては,従来の遺伝対環境という枠組に従って,専ら環境論の立場を厳守しつつ述べてゆくことにしたい。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.