特集 精神障害者の家族理解のために
対談
分裂病の家族論
小林 八郎
1
,
小坂 英世
2
1高月病院
2小坂診療所
pp.10-21
発行日 1971年5月10日
Published Date 1971/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204913
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I.家族教育について
●退院後の家庭内の位置の変動
小林 長い入院生活をしているうちに,発病時にその患者が家族内で持っていた地位に変動が起こってきて,その人が帰るべき家庭はあるけれども,帰るべき家庭内の位置が失われているというふうなことはよくあることですね。もうその人のおる家庭内の地位がなくなっている。たとえば戸主としてのリーダシップについていえばかつて戸主であった人が戻ってきては,いまの戸主的な地位にいる人が困る。家の内部の力動的構造にゆがみが入ってしまう。その患者がいないままで一つのバランスのとれた家族形態が維持され進行しているのに,その人が入ってくることによって,位置いかんじゃなくて,全体のバランスも失われるというふうなことがある。したがって,入院中に家族の人がしばしばやってくる場合にわれわれはすべて面会にくる人を善意に解釈して治療の一つの手だてと考えがちですけれども,実際はその人たちは,患者に会って,患者をなだめて家に帰らないようにしつけて帰るというふうなことが行なわれているということが大いにあるわけなんですね。
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