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特別研究 分裂病家族の研究(最終回)
分裂病家族内対人関係—事例研究のまとめ
The Interpersonal Relationship in the Family of Schizophrenic Patient : Some Considerations on the Three Case Studies
井村 恒郎
1
,
牧原 浩
1
Tsuneo Imura
1
,
Hiroshi Makihara
1
1日本大学医学部精神神経科学教室
1Dept. of Psychiatry and Neurology, Nihon Univ. School of Med.
pp.221-230
発行日 1971年3月15日
Published Date 1971/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201718
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I.序文
今日の分裂病家族の研究は,家族を全体として(as awhole)観察して,その病態を明らかにしようとしている。家族成員を,個人単位かあるいは個人と個人の間の対人関係(多くは母-子関係)として考察する従来の観点から脱却し,家族を単位としてその病理を追求しようとしている。疾病に悩んでいるのは家族であって,患者個人の罹病はそのひとつのあらわれ,ひとつの症状であるとする観点に立とうとしている。この視点の転回は,それなりの歴史的背景があってのことだが,しかしこの転回に伴うべき方法論的な問題は解決されず,いくつかの困難に直面しているのが現状である。従来の伝統的な個人を対象とした検索方法,考察の方法,あるいはその記述用語,などにとってかわる新しい方法が確立されていない。現状は,実証的方法としては,個人と個人との2者1組(dyadic)の対人関係,あるいはせいぜい3者1組(triadic)の対人関係を検討する段階であって,その積み重ねによる総合によって,家族面接,家族訪問などで得られた家族全体の印象所見を裏づけるというやり方で,家族の全貌をうかがおうとしている。
今回の事例研究にあたっては,われわれもまた家族面接および家族訪問によって得た所見をまず家族全体としてとらえ,それをI. C. L. 変法のテスト成績の総合像および音調テストの家族プロフィルと照合し,ついで分析的に父,母,同胞,患者のdyadicな相互理解の様態,および各個人の共感能力をテストした所見と実際の対人態度ないし行動の所見とを照合することにより,全体的な印象的所見を分節的にとらえて,前記の全体的所見の事由を明瞭にしたいと思う。
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