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講座
痛みの生理学 8.痛みに対する冷凍の応用と作用機序
Physiology of Pain. 8. The Application and Mechanism of Cryo-analgesia for Chronic Pain
塩谷 正弘
1
Masahiro SHIOTANI
1
1関東逓信病院
1The Kanto Teishin Hospital.
pp.529-533
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102904
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Ⅰ.はじめに
痛みは生体に対する外部からの侵害の警告信号であり,本来生体にとって必要不可欠の機構である.疼痛機構が完全に欠損する者は長期間の生存は不可能であり,おそかれ早かれ感染症などで死亡する.この生命維持にとって重要な疼痛機構も,場合によっては生体の存在を危うくすることがある.
癌末期で根治療法のない患者にとっては,その予後は栄養状態のいかんにより決まる.栄養状態を悪化させ,睡眠を妨げ,不安を増強させる第一の原因は疼痛である.根治療法が困難な癌末期痛患者では,痛みを除くことが第一の治療の目的となる.
特発性三叉神経痛,舌咽神経痛などの神経痛も,疼痛管理が主たる治療法である.
筋骨格系疾患においても,何らかの原因,たとえば微細な筋肉の断裂などが起こり,疼痛を生じるのであろうが,その疼痛が筋攣縮を生じ局所の血行障害などからさらに疼痛を増強させる悪循環を生じる.疼痛系路を遮断することでこの悪循環を除き症状の改善が得られる.
すなわち本来警告信号として重要な働きをする疼痛機構が,ある疾患の状態においてそれ自身が患者の日常活動を障害したり,生命をも脅かすものとなることがある.このような状態においてはまず行うべき治療法は,何らかの方法で問題となっている疼痛系路を遮断し痛みを取り除くことである.
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