Japanese
English
総説
痛みの病態機序
Pathophysiological Mechanism of Pain
横田 敏勝
1
Toshikatsu Yokota
1
1滋賀医科大学第1生理
1Department of Physiology, Medical College of Shiga
pp.1105-1115
発行日 1986年12月1日
Published Date 1986/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205814
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痛みは自分自身を感覚対象とする主観的意識内容で,われわれは幼時の体験を通じて警告信号としての痛みの意味を学んだ。その原因となったのは組織を傷害する可能性をもった侵害刺激である。この痛みは侵害刺激が加わった場所に定位される不快な感覚で,しばしば苦しみを伴い,われわれはこれを避けようとする。これを覚えてしまうと,同様な意識内容が侵害刺激と無関係に発生しても,痛いと訴えるようになる。
痛みはその誘因によって5つに大別できる。その第1は健常な生体に外から侵害刺激が加わったときに現れる正常な痛みで,警告信号として生体を損傷から護るのに役立っている。第2は生体内に病変があって発生する痛みで,これも治療を求める誘因となって警告信号の役割を果たすが,末期癌の痛みのように警告信号として役立たないものもある。この痛みは通常,正常な痛みの場合と同様,末梢の痛覚受容器が刺激されて生じる。第3は神経系の異常によって生じる痛みで,一次痛覚ニューロンの異常による神経痛や,中枢神経系の異常が原因となる痛み,例えば視床痛がこれに含まれる。第4は精神的原因,例えばストレスによって,肉体に異常を生じて出現する精神身体的な痛みで,筋収縮性頭痛などがこのカテゴリーに含まれる。第5は肉体に異常が見当たらない心因性の痛みで,この痛みの意識内容を侵害刺激による痛みと区別するのはむずかしい。
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