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講座
老人 5.老人の社会参加―特に米国・スウェーデンの実情を通しで
The Aged. 5. Social Integration of the Aged: The United States and Sweden
皆川 靱一
1
Jinichi MINAGAWA
1
1共同通信社文化部
1Kyodo-tsushin-sha.
pp.503-508
発行日 1982年7月15日
Published Date 1982/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102673
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はじめに
老後,つまり「定年」後の生活をどう生きるか―もちろん,それぞれの自由である.「人生は戦いなり」と一生働き続けるもよし,人生の黄昏どきを静かに,ゆったり楽しむのもよし.趣味を通して永年の夢を開花させるのもまたよし.「何か社会の役に立ちたい!」と社会活動に励むのもいいだろう.結局は,各人の人生観,宗教観などによる選択で決まる.そして,どの道を選ぶにしろ,自分自身の努力で探し当てるしかない.
当り前のことであり,それはそれでいい.だが……である.いまの老人たちを見ていると,いわゆる「社会派」が少な過ぎるのではないか.そう思えてしょうがない.人生80年時代,しかも欧米のどの国も経験したことのないほど大規模な高齢化社会が,急ピッチでやってくるだけに,一層その印象が強い.趣味で年を忘れるのも,老人大学や老人クラブでもいい.だが,それだけでは“老い”をめぐる今日の危機的状況についての認識が甘過ぎないか.老人自らがもっと政治や社会の動きに気を配り,不満や要求があれば臆せず声を上げていく必要があるのではないか.ここは一つ,老人層が団結して,文字通りパワーとしての威力を発揮すべき時代に入っているのではなかろうか―.
そんな想いを胸に,先ごろ私は欧米の高齢化先進国を取材して回ってきた.すでに高齢化のピークにさしかかっている欧米諸国での老人の社会参加の実態,ある意味では“老人パワー”の実情をさぐり,わが国にも参考になる教訓や着想を拾ってこよう.それが目的であった.その取材旅行の中から,米国とスウェーデンの例を紹介しながら,「老人の社会参加」について考えてみたい.
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