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Ⅰ.はじめに
ADLにおける股関節の役割は,大きく分けると,支持性と可動性の2つに集約される.支持性とは,体を支えて体重を支持し,いろいろの肢位で体を固定保持する作用であり,可動性とは,下肢を必要な位置へ運ぶ動作である.この両者の複合的な組み合せにより,人間の基本的な動作能力であるADLが円滑に行われる1).この股関節に関連するADLは7,8,14),臥位,坐位,立位における姿勢保持と,それぞれの姿勢をつくるための起居移動動作,および下着や靴下の着脱,爪切り,用便動作などの動作群がある.これらADLの評価,訓練の実際は一定した見解がなく,各施設においておのおのの障害に対応しながら試行錯誤が繰り返されている.著者らは,このADLを分析し運動学的に捉え,ADLに必要な可動域について検討を行ってきた9,12,13).立ち坐りの多い日本人の生活様式から,膝関節とともに股関節の可動性の障害は著しくADLを阻害する.特に,近年の関節外科の発達にともない,全人工関節置換術の頻度が高くなり,この分野の研究が要請されている.
股関節機能を阻害する因子は,疼痛,可動性の制限,筋力低下,変形拘縮,中枢神経の運動制御障害などがある.通常,これら股関節の機能障害は,1971年に報告された日整会変股症判定基準臨床像の評価三次案(日整会評価)5)に基づき評価されている.しかしながら,この日整会評価のみでは,理学療法の成績を評価したり,治療プログラムに反映させる具体的な情報を得るには充分といえず,広範な股関節機能を捉えるにいろいろな制約がある.これらを補う目的から著者らは,1976年より下肢の粗大な機能を含めた股関節機能評価表を作成し,日整会評価と合せて使用している.この2つの評価表から,ADLに必要な股関節可動域を分析し,ADLの改善に必要な下肢の粗大な機能の指標を得るため検討した.
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