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Ⅰ.はじめに
障害の程度を把握し治療計画をたてて行く際,日常生活動作(ADL)についての十分な検討がなされねばならない.ADLについての定義はまだ一定しておらず,1976年日本リハビリテーション医学会においては,「ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的なしかも各人共に毎日繰り返される一連の身体動作群」と言う概念を提唱し,「この動作群は食事,排泄などの目的を持った目的動作に分類」し,さらに「目的を実施するための細目動作に分類される」と述べ,「これらの動作は健常者と量的,質的に比較され記録される」べきだと報告している1).
ADLを詳細に検討する際,これを客観的に捉えるには関節の動き(可動性),支持性(筋力),安定性(重心の動き),動作の円滑さ(神経学的制御)の4つの面から検討を加えることが必要と考えられる.特に関節に基因する障害においては疼痛,支持性,可動性を正確に把握することである2).近年,関節外科の発達にともない人工関節置換術の頻度が高くなるに従い,特にこの分野の研究が要請されるところである3,4).諸動作における連続的な関節可動域を熟知することは,患者の残存障害に対するゴールの設定,治療計画などに極めて重要なことである.関節のADLに要する可動域の定量的な分折は,Johanston, R.C.,5)Laubenthal, K.N.,6)Kettelkamp, D.B.,7)などによって報告されている.しかし日本人における生活洋式は,西洋のそれと異るところから欧米の研究がそのままわが国にあてはまるものでなく,日本独自の生活様式に合わせた研究がなされねばならない.
今回,著者らは和式ADLと股関節の可動域を検討するため前額面,矢状面,水平面の三軸測定可能なElectrogoniometer(以下EGMと略す)を用いて,連続的な動作分析を可動域の面より検討を行い,股関節機能評価の基準,およびADL改善の指標を得るために本研究を行った(図1,2).
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