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講座
中枢性運動制御の生理学 6.随意運動の生理学
Central Motor Control: 6. Physiology of Voluntary Movement
丹治 順
1
Jun TANJI
1
1北海道大学医学部
1Department of Physiology Hokkaido University School of Medicine.
pp.769-773
発行日 1980年11月15日
Published Date 1980/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102263
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Ⅰ.はじめに
ヒトの多種多様な動作は日常的に何の苦もなく行われているが,その機能が何らかの原因で失われると,それをロボットや機械装具で補償することは大変困難であり,それは発達した現代の科学をもってしてもはなはだ不充分と言わざるを得ない.この事実は随意運動の複雑精妙さを語るものであり,その調節機構に要求される精密さがいかに高度のものであるかがうかがわれる.中枢神経系はどのような機構で運動調節を行っているのであろうか.
随意運動研究の歴史をひもとくと,まず心理学と深く結びついた行動学的な動作の観察・解析が主体であった時代に続いて,運動調節に関係していると考えられる脳の解剖を知り,その神経回路の構造とそこにおける興奮と抑制のようすを知ろうとする,いわば静的な知見の集積が精力的に進められたことがわかる.近年に至るとこれら2つの流れを引継いだ研究が更に進められると共に新しい手法による動的な研究も行われている.たとえば運動と同時に脳内の種々の部位からニューロン活動を記録してその個々のニューロン活動と運動の具体的な諸要素との関連を知ろうとする手法である.本稿ではこれらの広汎な研究を要約し,現時点での理解の水準を浮きぼりにしようとするものである.
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