特集 片麻痺患者のリハビリテーション目標
<随想>
老人片麻痺患者の生きがい
浜村 明徳
1
1国立療養所長崎病院リハビリテーション科
pp.407
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102168
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J・アドラーは「Aristotle for Every-Body」という本の中で,人間の活動を3つの次元,つまり「つくる」「行動する」「知識を求める」に分け解説しているが,私は人間の「生きがい」は,この3つの次元における活動状況と深く関係していると思う.「行動する」という次元では,人間を社会的存在として把握しなければならないだろうが,私はこの次元を中心にして,老人片麻痺患者の生きがいに,もしリハビリテーションスタッフとして関われるとすれば,どんな形があるのかを考えてみたい.
そもそも「生きがい」を感じるかどうかは,その人個人の問題であるし,誰かが誰かに与えるという様な事は不可能なわけであるが,人間科学としてのリハビリ医学は,「治療」という行為を通して,この哲学的問題にも関与し得る可能性を持ち合わせていると思う.極論すれば,障害の程度を問わず,患者が生きがいのある生活をおくってくれたら,その為に行われた治療は成功したと言えるであろうし,その逆も成り立つ.つまり患者に「生きがい」を持ってもらう為に,なされる行為を「治療」と言い換える事も可能なわけだ.それゆえ,私達は機能的(肉体的・精神的)改善を図り,社会的・経済的環境を整備する事によって,患者が生きがいの持てる情況の再構築に努力するわけだが,たとえより良く整備された情況が作れても,「生きがい」へ結びつける事が出来ない事も,事実である.
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