特集 片麻痺患者のリハビリテーション目標
<随想>
老人片麻痺患者の生きがい
奥川 幸子
1
1東京都養育院付属病院
pp.406
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102167
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脳卒中に見舞われた老人患者の行く末はさまざまである.その発病は若い人ほどではないにしても彼らの生活に劇的な変化をもたらす.仕事がなくなる,家事や孫の世話ができなくなるなど,社会での役割を失う.発病前と同じ隠居生活に戻る人でも,依存性はさらに増大し,日常の生活に誰かの手と時間を要求するようになる.私は,病院で働くソーシャルワーカーという役目柄,依存性が特に増大した老人患者とその家族に集中して会う.そこでは,いつも少しでも人間らしい生活を確保する手立てが話し合われる.老人問題は,端的に表現すれば“誰が食べさせ誰が世話をするか”という経済扶養と介護扶養につきる.私の前にいる脳卒中の老人は,正に老人自身の役割どころか,生きるために必要な介護の課題で汲汲としている.介護の基盤があってはじめてプラスアルファを考える余裕が生じる.
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