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Ⅰ.初めに
生涯教育というものは,個人のどの時点から始まるのであろうか.今回の特集は卒後教育がテーマであるが,筆者に与えられた課題は“理学療法士の生涯教育”である.生涯教育を英訳するとLifelong educationとかContinuing educationとなるようであるが,語感からはLifelong educationが生涯教育でContinuing educationが卒後教育のように思われる.事実アメリカ理学療法士協会学術誌JAPTAは卒後教育をContinuing educationとしている.
ところで生涯教育は生涯学習とも言われ,人間は学齢期だけでなく,生涯にわたって学び成長する可能性をもっているので,幼児期より老年期に至るまでの教育をこれまでのように家庭教育・学校教育・社会教育という具合に,ばらばらに分けて考えるのではなく,これらを統合して,全生涯にわたる教育を組織的に進めるべきであるとする教育観である.このような考えかたは古くから言われていたようであるが,1967年にユネスコの国際シンポジウムで新しい教育観として再評価されてから世界的に脚光を浴びるようになった.日本の教育界も,早くからこの教育観を受け入れ,中教審も1971年に生涯教育について答申している.それによると「生涯教育とは,国民の1人1人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために,教育制度全体がその上に打ち立てるべき基本理念」であるとしている.その政策の具体的なものとして放送大学の発足,大学開放による公開講座,新聞社などによるカルチャーセンターの盛況などがある.
生涯教育が高く再評価されることになった背景として,①学習人口の増大(社会生活上不断の学習が求められるようになったこと,寿命の延長により老人人口が増大したこと,女性の権利の向上に伴って女性の学習者がふえた.),②技術革新に伴う生活様式の変化,③社会構造の変化(政治上の権利の増大と学習の必要),④文化の大衆化(特に視聴覚教材の発達と書物の大衆化),⑤余暇の増大(余暇の使い方の学習も必要),⑥生活行動の規範の消失(規範を自ら立てる力の学習)などという事態が急速かつ広範に進行しているため,これまでの教育組織観では賄いきれなくなってきたからだと言われている1,2).
以上のことから考えて,理学療法士の生涯教育としては①自らを生涯教育することと,②他人の生涯教育を健康の面より支持援助することとの二つの目的があると思われる.これら二つの目的を果たすために,理学療法専門家として,卒後教育は必要不可欠なものであるということができる.
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