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講座
理学療法概論 3.理学療法における治療手段の病態生理学的基礎―長期臥床や固定による種々の生体組織のdeteriorationとそれに対する運動療法の考慮点
Pathophysiological Basis of Physical Therapy. (Physical Deterioration due to Prolonged Immobility and the Principle of Its Treatment Principles)
嶋田 智明
1
Tomoaki SHIMADA
1
1高知医療学院リハビリテーション科
1Kochi School of Allied Health and Medical Professions.
pp.211-219
発行日 1980年3月15日
Published Date 1980/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102116
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Ⅰ.はじめに
長期臨床等による身体活動の制限あるいは低下によって,身体の各種の組織が不都合な変化を生じることはよく知られている.KrausとRabb1)は,身体の不活動性によって身体面と精神面に種々の変化が起こるとし,低運動症(hypokinetic disease)の概念を紹介した.これは1895年すでにRouxが「身体活動が適度であれば,身体や体力は現状を維持するばかりでなく強大となり,逆に使用の方法を誤ったり過度に使えば,身体や体力は減退するばかりでなく障害を起こす」と述べた点と一致する考えである.Mossan2)は身体活動が長期にわたって制限され,そのため身体および心理的不調(deterioration)を来たした状態を総称してdeconditioningと呼んでいる.リハビリテーションの概念がかなり浸透した現在では,早期離床,運動の早期開始があたり前とはなりつつあるが,つい最近までベッドでの絶対安静をとり過ぎたために関節の拘縮をはじめとして,種々の二次的合併症を惹起した患者を見ることも少なくなかった.理学療法をはじめとして医学的リハビリテーションの主体は運動療法といっても過言ではない.このような点を踏まえ,この稿では身体運動の制限あるいは低下による種々の生体組織の変調を考察し,運動訓練の意義やその効果について考えてみたい.
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