とびら
今,学ぶ時
西本 東彦
1
1大阪府立盲学校
pp.79
発行日 1980年2月15日
Published Date 1980/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102085
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「何ごとも学ばず,何ごとも忘れず.」これはフランスの政治家で,外交官のタレイランの言葉である.一握りの僧侶と貴族達が平民を支配していた絶対主義下において1789年フランス革命の幕が切って落されたが,この時本国の革命を嫌って外国に亡命した貴族達は,王政復古までの25年間人生のどん底生活を余儀なくされ辛酸をなめつくした.しかし,ナポレオンが没落後また陽の当る場所に出た彼らは,世界全体がすでに封建制の矛盾とゆきづまりを感じ,市民社会の理想に向って着々と歩みつづけている時に,なお昔の夢を追い,かつての栄光にあこがれ,これを忘れることができず,苦しかった時代から何の教訓も学びとらず,つまり経験が何一つ確かな知恵になって吸収されていないことを嘆いた言葉がこれである.
我々は15年前,リハビリテーション医学という新しい医学体系の中で,これまた新しい専門職として脚光を浴びて誕生した.ところが,ちやほやされたいい時期はあっという間に過ぎ,壁また壁.それでも免許さえ持っておれば就職先はまだ何とかみつかることをいいことに,少しでも地域社会に根をおろし,専門職の確立を願って奮戦の連続である.
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