The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 13, Issue 10
(October 1979)
Japanese
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はじめに
一つの職業が存在し,継続発展していくためには,その所属している社会にとってどの程度有益なのか,それとも余り必要とされていないのかが常に評価されているといえる.一般論から考えても生活の場としての社会を知り,資源を活用することは当然のことと思う.まして特に理学療法士(以下PTと略)と作業療法士(以下OTと略)の治療対象の目標が「社会人として最高の機能を発揮すること」である以上,社会を無視したり,軽ろんずることは,治療の方向を見失わせたり,対象患者の動機づけができなくなることや,家庭,職場(学校)での適応効果の減少にもつながる.生きた社会について充分で正確な知識を持ち,医療と福祉と教育と職業がどのような制度と仕組みによって公的,私的に運用されているのか,対象患者にとってどんな社会資源を必要とし,現実的に何が活用できるのかを学ぶことは非常に重要なことである.
社会資源とは何を指すのか定義づけるとしたら,いくつかの考え方があると思う.PTやOTは従来病院にいて「患者を治療する」のが業務であるが,広く病院という地理的環境以外の社会にある全ての機関,団体,組織(この場合は家庭もここに入る)を指して社会資源といえる.また,既に家族や職業安定所,保健所,福祉事務所,児童相談所などを活用していてより多くの理解し協力する人手と諸機関を探すPT・OTにとっては,これから開拓する新しい対象が社会資源の定義として浮かぶことであろう.
一般的には,対象患者と家族を治療単位にして病院施設(通園センターを含む)の機能以外を社会資源としているようである.
その中には既存の法律による制度で公的機関(職業安定所,児童相談所,福祉事務所,保健所など)と法人制度の社会福祉協議会ほか,民間の団体(YMCA,YWCA,ボランティア協会,PTA,同窓会活動の一部など)が入る.こうした組織ばかりでなく有志を個人単位で協力者としていったり,諸々の活動に必要な資金を集めることも含まれる.
一方的に医療職が社会の中を飛び回って資源を探すと共に,病院施設に社会福祉司や精神薄弱者の就労促進員が訪問し相談にのれるような開かれた組織として窓口を開くことが望ましい.欧米のように職業更生相談員(ボケーショナル・カウンセラー)とケースワーカー(PSWを含む)が配備されているならば,こうした活動はもっと広く確実に進展していくのであろうが.
対象患者は病院施設では「患者」「障害者」,福祉施設では固有名詞の氏名,教育制度も氏名と「児童,生徒,学生」と呼ばれる.在宅のアフターケアーの患者を家庭で治療する際は固有名詞を呼ぶし,精神医療のディケアでは依頼者とかメンバーと呼んでいる.この稿では顕在化した患者はもとより,潜在的患者で予防が主体となる対象も含めるが,便宜的に対象患者を用いて総称としたい.
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