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特集 理学療法・作業療法の学問的体系をどうするか
理学療法・作業療法の学問としての展開
Physical Therapy and Occupational Therapy as Science and Technology
砂原 茂一
1
Shigeichi SUNAHARA
1
1国立療養所東京病院名誉院長
1Tokyo National Chest Hospital.
pp.3-8
発行日 1979年1月15日
Published Date 1979/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101826
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Ⅰ.“看護学”の場合
筆者は,わが国の指導的な看護婦の間では大変評判が悪い男である.それは“看護学などというものが果して存在するのか”とか“看護婦の独立性などというのはナンセンスではないか”などという奇嬌な言辞をろうするからである.筆者自身いくらか奇嬌さをてらっているという自覚がないわけではないし,心の中では医学における看護の不可欠性,医療チームの中の看護婦の役割の重要さを十分認識しているつもりである.
しかし,学問としての“看護学”という独立した体系が安易に構築できると考えるのは,少々気楽すぎるように思われる.看護婦の業務は保助看法にいう“療養上の世話”と“診療の補助”とであるとされているが,医師の仕事の補助の方は,看護ないし看護学の独立性になじまないというのでほとんどもっぱら患者の世話の方を看護婦固有の活動領域であるとして,健康のあらゆる段階において,また個々の具体的な病気をこえて病気である人間一般,療養生活一般を支えるのが看護婦のつとめであり,そこに「医学」とは別な看護学の固有の領域が存在すると主張するのである.このような考え方は日本の看護婦自身の発想によるものではなく,アメリカの何人かの看護理論家の思想の祖述,ないし翻案に過ぎないから,わが国の指導的な看護婦のすべての口から判で押したように同じような平板な主張が繰りかえされることになり,学問を創造しようとするものの手作りの苦労が伝わって来ないのである.
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