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Ⅰ.はじめに
昭和51年10月,身体障害者雇用促進法の改正に伴い,一般企業も徐々にではあるが身障者雇用対策を講じ始め,また自社内授産雇用と言う特殊な形のものを考える大企業もあり,わずかずつではあるが,身障者の雇用が増大してきている.特に,最近各県の雇用促進協会と職業安定所との働きかけにより,脳性麻痺と精薄の就労が目につく.
法改正後のデーターがないので詳細については不明であるが,企業に受け容れられる可能性の大きいのは,歩行が可能で上肢にほとんど障害のない,健常者と変りないような,極く一部の限られた人達であり,流れ作業的労働においては健常者以上にすぐれた労働力である脊髄損傷等の車椅子使用者は,特別の場合を除き一般企業への就労は困難であるが,その主たる原因は,機動性・安全性に富む,足の代償である車椅子にとっての宿命的と考えられる,スペース・高さ・段差の障壁を取り除くことが余りにも困難視されているからである.
就労するにあたっては色々な問題があるが,その中で住居および作業場環境が特に問題であるが,住居に関しては本人の側において解決すべきであるとしても,作業場環境は全て他に頼らねばならない.そして雇用サイドからすれば,工作機械等の改造は別としても,スペースを広くする,段差をなくする,洋式トイレを設置すると言うような基本的問題の解決は,デメリットだけしか考えられない.
日本の場合,畳による生活様式自体があらゆる障壁の根源になっており,敷居をまたぐとか玄関の上り下り等は,建築上の美,あるいは俳句等に見られるワビ・サビと言った芸術的な雰囲気,心情を高める面すら考えられ,またぐとか段の上り下りとかの物理的障壁は一種の美であり善であり,従って工場内のその種の妨害物は障害として受けとられない.
太陽の家には,130名の車椅子常用者がいるが,100名近くが不便ではあっても畳の生活の方が良いと答えている.この種の障害はかぞえあげれば際限がなく,その改善守には,単に物理的な面からだけでなく,心理的な面からの問題解決を図らねばならない事が多いと考えられるが,働く意欲があり,働く機会が与えられたにもかかわらず,物理的な環境条件が不備のために就労できないことがないよう,どう言ったことが抵抗であり,障壁となっているか,それをどのように解決すればよいか,と言う事を,先ず障害者自身が良く知り,その周囲,そして社会全体が理解しなければならない.
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