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はじめに
小児という身体的にも精神的にも成長と発達の過程にある,いわば動的な状態にある人間の持つ,限りない可能性あるいは潜在的な能力を把握することには限りない難しさが存在するが,中枢神経系の障害により運動発達障害を来している脳性麻痺(以下CPと略す)に対する療育のきわめて重要な医学的課題は,CP児を早期に発見すると共に,発見された患者にただちに適切な治療を施すことである.
CP児の早期診断は,1回の医学的検査のみで常に行えるものとは限らず,それには長い過程を要する場合が多く,いくつかの段階に分けることができる1).すなわち,
1.神経発達障害の疑いを持たせるような徴候の発見
2.神経発達障害の判定
3.CPの診断
となるが,神経発達障害を疑わせる徴候は,出生時の検査に引き続いて,繰り返し何回も検査を行う必要がある.「早期に」というためには疑わしい徴候の発見は生後3ヵ月位までになされる必要があり,広範なスクリーニングのためには,できたら誰にでも行えるような簡単な判定法でなければならない.そして,検査を繰返し行っても,発達の経過がただちに明らかになり,訓練を受けた検査担当者がごく短時間で検査でき,その結果を記録できるものが必要とされている.
発達障害の診断が下された場合には,ただちに治療が始められなければならないが,その後の発達および治療結果を観察しつつ診断は続けられるのである.
この時期になると,非常に重症のため当初から麻痺が顕著な症例は別として,いろいろな型のCPを区別し,予後や子どもが持っている潜在能力についての訓練方法の選択などについて診断が下せるようになってくる.
このように,CP児の診断に際しては,生後ただちに異常な筋緊張や姿勢などから確定的な診断を下しうる例もあるが,大多数においては運動発達の遅延が先行し,後になって特有な症状の発現がみられる.したがって,CP児をできるだけ早期から発見,治療しようとすれば運動発達遅延児を対象とせざるをえなくなり,その対象の中には正常児の単純な運動発達遅延や知恵遅れ,その他による運動発達遅延児も当然含まれてくることになる.
このような場合,CP児の早期発見のために詳細な運動発達検査をすべてに,いつも行うことは困難なことであり,実際的なこととはいえない.
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