講座 運動発達障害・3
運動発達障害の理学療法評価
河村 光俊
1
,
烏山 亜紀
2
Kawamura Mitsutoshi
1
1広島大学医学部保健学科理学療法学専攻
2広島大学大学院医学系研究科
pp.657-661
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105626
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はじめに
我が国において,中枢神経系障害児の理学療法が整形外科的アプローチから神経生理学的アプローチ,神経発達学的アプローチへと主流が移ってから既に30余年が経過した.この間,観血的治療法も同時に進歩して整形外科的治療成績も向上し,欧米では選択的背側神経根切断術(selective dorsal rhizotomy)による成績が多数報告されてきた.筆者も自分の目でrhizotomy後の子どもと接したことがあるが,手術後の理学療法を欠かすことができず,手術が理学療法にとって代われるものではなく,神経生理学・発達学的アプローチのみでも解決できない脳性麻痺児が多く存在する.
この30年間が経過した現在,変形・拘縮の頻度,程度が飛躍的に改善したとするデータは示されていない.そして,相変わらず股関節脱臼や膝の屈曲拘縮を示す脳性麻痺児は多く存在している.いわゆる重症心身障害児では,多くの部位で変形拘縮を示し,30年前に出会った重症児と様相は変わっていない印象を持っている.
理学療法士として,出会った全ての子どもに自信を持って満足のゆくサービスを提供できたとは思えない.理学療法士が中枢神経系障害児の短期間治療効果を客観的に示すことを強く要求される時代に来ている.その意味で,信頼性と妥当性を兼ね備えた評価を実施し,自らの治療を検証し,自らを律し,治療法を発展させてゆくプロとしての意識を持たなければならない.
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