The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 9, Issue 12
(December 1975)
Japanese
English
講座
運動学シリーズⅡ 肩・肘・手関節のKinesiology(最終回)
Kinesiology of the shoulder, elbow and wrist (3)
金子 翼
1
Tasuku KANEKO
1
1府中リハビリテーション学院
pp.861-864
発行日 1975年12月15日
Published Date 1975/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101132
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肘伸展
肘伸展は屈曲に比較すると機能上の重要さは少い.たとえば右肘関節の自動屈曲が急に障害されると直ちに,顔を洗う,歯をみがく,食事をする,ボタンをとめはずしする…等というADL上の困難が生じ不自山さが目立つが伸展機能の障害では,それが重力によって代償可能であるため屈曲ほど深刻ではない,ヒトにとって肘屈曲の機能が伸展のそれに比し重要であることは,それらの運動に関与する筋や支配神経を比較することで明らかとなろう.つまり屈曲に関しては,上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋・円回内筋等という筋が筋皮神経・橈骨神経・正中神経といった三種の異なった神経に支配されており,それらの内のいくつかの筋あるいは神経に事故が発生しても,他の筋や神経で代償できる可能性を充分残しているのに対し,伸展は上腕三頭筋(と小さな肘筋)が,橈骨神経という一種類の神経に支配されており,これが障害されるとほとんど他の筋での代償の余地が残されていない(手根伸筋,特に尺側手根伸筋が多少関与するが),しかし前述の如く立位や坐位では重力によって自動伸展が可能であるしまた伸展位の保持等も過伸展位で肘をロックすることにより(図1)可能であるという別の形での代償機能は残されている.
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