The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 9, Issue 9
(September 1975)
Japanese
English
特集 脳性まひの治療
脳性まひ児における知覚訓練
Perceptual training in Cerebral Palsy
杉原 素子
1
Motoko SUGIHARA
1
1府中リハ学院
pp.628-632
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101077
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Ⅰ.はじめに
人間や動物は与えられた環境の中で刺激を受け取り,それに反応し自分を適応させていく.しかしながら同じ「客観的環境」の中にいて人間や動物が異なる行動をとるのは何故であろうか.生活体は「客観的環境」の中の全ての刺激を感受するわけではない.では一体どのような条件が満たされる時にその刺激は「知覚」されるのであろうか.即ち,何が「もの」として見えるのであろうか.立体感,奥行感はどうしておこるのであろうか.色彩はどうしてあらわれるのであろうか.我々の日常生活にしみ込んでいる「恒常現象」とは何であろうか.映画の原理となる「運動の知覚」はどうして生じるのであろうか.音楽の生命ともいうべき「メロディー」はどのような構造を持つのであろうか,等の我々の「行動」を規定するこれらの知覚的形態は実に神秘的現象である.我々の得た知識は我々の知覚によって開かれたものであるとも言える.
人間の行動を規定してしまうこの知覚という問題に関心を持ったのは,約8年前,板橋の整肢療護園で脳性まひ児に接し,作業療法の場面で編み物をしている時に,私自身の編み方のパターンと全く異るパターンで作業をすすめていくのを見て驚いて似来である.その当時は,脳損傷児の知覚のゆがみとして,ゲシュタルト概念に興味をもって脳性まひ児に接近していた.臨床的に何かゆがんでいるという事実は知っても,では一体どのように治療し,正常な知覚に近づけるかという問題に関しその回答を得ることは難しい.いくつかの理論は紹介されているが,その効果についての資料は,未だ充分とは言えない.
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