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はじめに
関節可動域(以下ROMと略)の知識は,医師,療法士など医学の分野にたずさわる者にとり,重要なばかりでなく,人間工学の分野で,デザインの仕事にあたる人にとっても,必要なものである.それゆえ,本世紀の初めより,ROMの評価の基礎に関する研究は,いろいろな専門的,学術的背景を持つ人々により,行なわれてきた.特に,リハビリテーション医学の発達とともに,身体障害の程度を測定する分野で関心が高まり,MooreやScalterらにより,広範な文献の,再検討が行なわれた.
現在,ROMの測定と記録は,我々療法士にとり,基本的評価種目の一つになっている.これは各関節の正常,異常の運動を熟知することが,合理的で,有効な治療訓練のPlanningや,この治療計画の修正,中止の目やすともなるからである.
脳性まひ(以下CPとす)の治療訓練を進めて行くうえでも,ROM測定は,基本的な検査項目であり,中でも,股関節の可動域,ことに屈曲拘縮の有無は,しばしば大きな問題となることがある.このことから,股関節の可動域を正しく測定することが,治療programをたて,治療効果を評価するうえで重要になってくる.
従来,一般的に,股関節の屈曲拘縮を測定する方法として,Thomas's well leg flexion test(以下Thomas法と略す)が用いられてきたが,この方法については,骨盤,および腰椎の状態が一定とならず,測定値に誤差を生じるのではないか,との疑問が出され,検討した結果,
①骨盤の傾斜の状態が明確につかめない.
②腰椎の状態を確認しがたい.
③非検査側下肢の屈曲は,他側の伸展を妨げる因子とならないか.
④骨盤軸を体軸に一致させようとすることに問題はないか.
などの問題が考えられた.そこで我々は,
①正確な測定のためには,おのおのの軸をどこにとるべきか.
②骨盤と大腿骨軸との角度を測定すべきではないか.
③骨盤の傾斜に一定の条件を与えることで,腰椎の状態に一定の状況を作り出せないかなどを考慮して,徒手的手技のみで測定が可能で,より正確な測定値が得られると考えられる測定方法を設定し,Thomas法との比較検討を行なった.
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