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はじめに
手指の運動学において,筋電図を十分に活用し新しい知見を報告したことで,Longの業績は世界に知られている.機能的な解明を意図として,1944年にInmanおよび彼のグループは,はじめて肩の運動の研究に筋電図を応用した,これは筋が収縮する際には起電があり,その起電圧の加重がある程度,筋肉内に実際に起こっているテンションと比例関係にある,という考えに基づいたものであった.肩の研究でセンセーションをよび,1947年には歩行の問題をとりあげ,現在もInmanの歩行の研究は,最も引用されている文献の1つである.
その後,他の人々により足や肘の動きなどが研究されたが,動く指の筋電図学的研究をはじめて行なったのは,1954年CattonとLakeで,彼らは初歩的なものに手をつけている.
Longは若き天才の異名をもち,名門中の名門ペンシルヴァニア大学医学部を最年少で首席で卒業.ニューヨーク大学,メーヨークリニック,および陸軍病院でリハビリテーション専門医のコースを終え,リハビリテーション医学界の最大ホープと注目された.ニューヨーク大学のラスク教授依頼の研究主任のポストを断わり,デトロイトのフォード病院のリハビリテーション部長として就任,在任2年間でフォードを米国民間病院における,義肢リハビリテーションのリーダーに成長させて後,当時ポーランドより亡命,脳血管障害のリハビリテーションで世界的に有名であったピシンスキーを慕って,新しくできたCase Western Reserve大学のHighland View病院リハビリテーションセンターの研究主任として,クリーブランドに移り,1957年以来10数年の間,手指の運動学,hemiplegia,myoelectric control,orthoticsなどの分野で,60数編の歴史に残るオリジナル文献を発表していることは,全く驚異的である.
Long以前に,解剖学的な立場より手指について業績をあげている人々には,Bunnell,Kaplan Wood-Jones,Wynn Parry,Kyler,Flatt,SteindlerおよびHollinsheadらがあげられるが,それらは位置的な可能性を述べたものが多い.
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