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はじめに
脳性マヒの治療に関しては,今日なお多くの論議がある.そもそも機能訓練を行なうこと自体,どれほど価値があるのかということも問題であるが,それはともかく,治療を行なうことにしたとしても,それをいつから始め,いつ中止すべきかといったことも問題である.
脳性マヒは,過去多年にわたって主として整形外科医の手によって治療されてきた.Phelpsがこの道に大いに貢献して,広く世に知られたことは周知のとおりである.ところがその後,神経生理学的な立場からいろいろ治療手技が発表されるようになった.Temple FayやKabat,Margaret RoodやBobathらの治療方法がそれである.
これらの方法は,しばしばneurodevelopmental approachといったぐあいに,一括して説明されたりするので,混乱をまねいている向きもある.本来は互いに若干類似性はあるとしても,それぞれ手技もねらいもかなり異なったものである.だがそれぞれの手技の基本概念を比較検討した書物は,現在のところ遺憾ながらない.しかしそれらから次の事項を妥当な治療指針としてあげることができる.
(1)個々の筋を訓練するというよりは,まとまった運動パターンを修得させるように訓練すること.
(2)できるだけ正常児の運動発達段階に沿って訓練をすすめること.
(3)症例によっては補助的手段として,整形外科的あるいは外科的治療を加えること.
(4)親に対する指導,家庭での取り扱い,教育,知的発達などの重要性を認識し,情緒的,社会的適応をよくすること.
療法士は,対象とするケースに最もかなっていると思われる手技を選び出すわけだが,選ぶからにはその手技を十分に知っていなくてはならないし,原理を十分に理解していなくてはならない.
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