とびら
職業と人間性
小林 提樹
1
Teiju KOBAYASHI
1
1島田療育園
pp.5
発行日 1969年2月9日
Published Date 1969/2/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100176
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昔から職業に貴賤はないといわれ,福沢諭吉先生は天は人の上に人をつくらないとうたっている.たしかに,職業にもまた人間にも,本質的には格差があってはならない.ところが,これを社会的な立場でみる時には,どうしても格差なしではすまされない現実に遭遇してしまう.たとえば,優秀な卒業生は,待遇のよい好条件で迎えられるのは常識である.ここには,高度の技術や知識を獲得したものが社会的に優遇されることと,職業や人間性という本質的なものとは,別個の次元のものであることを,明瞭に区別しなければならないものがある.
たしかに,ある職業は社会的に非常に貴重であることがある.それは職業そのものが貴重であるからではなくて,その社会の要求が強いために自然に尊重されることになるにすぎない.本質的な職業性にかかわりのないことで,単に時代とともに推移する社会情勢に左右されたシワ寄せなのである.しかし,そのことによって人間性の優位を格づけするものと,錯覚してはなるまい.
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