特集 脊髄損傷のリハビリテーション
社会復帰のための理学療法の実際
浜島 良知
1
1東北労災病院理学診療科
pp.14-22
発行日 1967年11月9日
Published Date 1967/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100058
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はじめに
脊髄損傷者の社会復帰の困難さはかねてより指摘されているところである。そしてそのよってきたる原因を考えるに,まず,傷害者のみをピックアップしてみても,脊髄損傷に起因する運動・知覚麻痺,これに伴って容易に発生する褥創,ならびに膀胱・直腸障害,さらに完全麻痺にあっては必発といってもよい尿路感染などの合併症が常に生命の危険を伴い,たえず医療管理を必要とするからである。したがって,たとえ2,3の脊損者授産施設が発足したとはいえ,その収容人員は全国4,000人もいると推定される脊損者からすれば,まさに九牛の一毛にすぎないといってもよく,また家庭復帰もままならない現状にあるため,どうしても長期入院を余儀なくされる場合が多い。その結果としてかれらの大部分は全国各地の労災病院に収容されていることは周知である。
さらに第二には一般社会人の脊損者の仕事への能力の無理解に伴って派生するこの方面の施策の貧困も,彼らの社会復帰を困難にしている大きな原因である。かかる環境下にあってはリハビリテーション作業がどうしてもマンネリズム化をきたしやすいし,リハビリテーションチームメンバーも患者たちも意欲の低迷しがちな危険性を伴いやすいのである。
ゆえにわれわれセラピストはリハビリテーションチームメンバーの一員として,リハビリテーションの本来志向している患者の一般社会復帰の実現への努力と責務がいよいよ重いと感ずる次第である。このような観点から当院で施行しているPTの具体的方法を述べたいと思う。
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