特集 中耳真珠腫最新の知見—病態から治療まで
III.後天性真珠腫・治療
真珠腫性中耳炎の手術的治療—Open method tympanoplastyと乳突充填術
湯浅 涼
1
1東北労災病院耳鼻咽喉科
pp.865-872
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210391
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I.open method tympanoplastyと古典的中耳手術
鼓室形成術は1952年Wullstein, Zöllnerらによって発表され,その後多くの変遷を経て今日の普遍的な術式へと発展した。この間に多くの技術的進歩があった半面いくつかの重要な反省点も浮かび上がった。その一つに真珠腫の術後再発問題がある。鼓室形成術の進歩によりその適応が次第に真珠腫に拡大され,非真珠腫と同様の術式が用いられてきたことが大きな原因と思われる。closedmethodによる術後の真珠腫再発率は報告者により数%から30%前後と幅があり,また再発問題に対する捉え方もまちまちである。たとえ何回再発してもclosed methodに固執する術者から,ある程度再発を覚悟で一次手術をclosed methodで行い,二次手術で真珠腫の再発を点検する段階的鼓室形成術を行う術者,原則的に真珠腫に対してはopen methodをとる術者まで多彩である。そしてこの鼓室形成術後の真珠腫再発問題は国際的にも関心事でまた議論の多い事項である。われわれはすでに10年前から"再発のない,なるべく1回の手術で,しかも術後安定した耳"を目標に真珠腫の手術を行ってきた。その結果現時点でも真珠腫には"原則的にopen methodで"という立場で真珠腫に対処1)している。このopen methodは基本的には中耳根本手術,聴保根治手術など古典的中耳手術と一見類似しているが,細部にわたり近代的鼓室形成術の技術,理論が取り入れられている。以下古典的中耳手術と近代的open methodtympanoplastyとを対比してみる。
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