特集 聴力改善手術
2.慢性中耳炎
2)真珠腫性中耳炎 (4)乳突充塡術
八木 聰明
1
1日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野
pp.105-111
発行日 2005年4月30日
Published Date 2005/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100121
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Ⅰ.手術の概念
乳突充塡術は,一般に真珠腫性中耳炎の手術によって削開された乳突腔を種々の材料を用いて充塡し,開放腔をなくす手術法である。したがって,本術式のみを目的とした手術は少ない。しかし,過去の手術で作られた開放乳突腔を,外耳道形成を行いながら閉鎖するために充填術が行われることもある。乳突洞や乳突蜂巣はその発達程度には個人差が大きいが,本来人体に存在するものなので,これを何らかの材料で充填することは健常な状態に復帰させようとする手術ではないことが,本術式の1つの特徴でもある。
真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術では,canal wall up tympanoplasty(closed)法,canal wall down tympanoplasty(open)法,さらにcanal wall down tympanoplasty with canal reconstruction(open then closed)法の3者のいずれかが選択される。Canal wall down法では真珠腫の再発はないはずであるが,他の2者では真珠腫再発が大きな問題である。Canal wall down法に真珠腫の再発がないことについては,canal wall downになっていること自体が真珠腫そのものであり,再発云々を討論するには当たらないという指摘もある。
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