特集 聴力改善手術
2.慢性中耳炎
2)真珠腫性中耳炎 (1)Open法
須納瀬 弘
1
,
吉原 俊雄
1
,
小林 俊光
2
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科学教室
2東北大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室
pp.73-86
発行日 2005年4月30日
Published Date 2005/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100118
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Ⅰ.はじめに
真珠腫性中耳炎は,本来中耳腔であるべき場所に自浄能が失われた角化扁平上皮が存在する疾患であり,炎症を伴いつつ周囲骨組織を進行性に破壊する。その形成機序にはいまだ不明な点も多いが,大別して先天性のものと後天性のものがあり,大半を占める後天性真珠腫には耳管機能障害が深く関わっている。病態・病勢に応じて経過観察から手術までが治療の選択肢となり得るが,経過観察を行う場合には画像や鼓膜所見の変化が意味するところを的確に把握し,疾患による合併症と手術のリスクを評価して治療のタイミングを逃してはならない。合併症はときに非可逆的なため,炎症の強い真珠腫は可及的早期に手術を行うべきである。
手術の目標は,中耳腔側と体表側を明確に仕切り,中耳腔を粘膜が,体表側を自浄能のある角化扁平上皮が覆うよう解剖学的に修正すること,および真珠腫が侵した伝音機能を回復することである。手術法は,外耳道形態を保存して真珠腫を摘出するclosed法(canal wall up)と,外耳道後壁を削開して真珠腫を安全な形にするopen法(canal wall down)に大別される。術後に機能的・形態的に正常と変わらぬ耳となれば理想的である。しかし,後天性真珠腫の形成に深く関連する耳管機能障害は手術による修正ができず,外耳道を保存すると一定の割合で再発をみることになる。そのため筆者ら1,2)は,含気腔が縮小し耳管に依存した換気の必要性が減ずるopen法を基本術式として採用している。
本稿ではopen法を行ううえで重要なポイントについて詳述する。
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