創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
耳—症候と疾患
真珠腫性中耳炎
中野 雄一
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科
pp.744
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208720
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主に鼓膜の弛緩部あるいは後上部に穿孔があつて,上鼓室に真珠腫が形成される慢性の中耳疾患である。臨床的には,外耳道深部表皮が中耳に侵入,増殖し,嚢状に拡大したものと考えてよい。本症の恐れられる理由は,いうまでもなく,その強い骨破壊性にある。すなわち単純性慢性中耳炎に比べ内耳障害,顔面神経麻痺,頭蓋内合併症などの併発率が高い。通常耳漏,耳痛,時に耳後部腫脹などの不快症状が出現してから受診する。すなわち感染性真珠腫として受診するため,ポリープや肉芽組織などを伴つていることが多く,簡単にはその全貌がつかめない。一方感染のない場合,薄い痂皮形成などにより穿孔部が被覆されると,これを見逃がすことがある。いずれにしても,早期発見,早期治療が望ましい。このためには,本症の診断,治療に際し,常に拡大鏡,できれば手術用顕微鏡を用いることが何よりも大切である。
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