増刊号 画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール
部位別診断法
Ⅰ.耳・側頭骨
慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎
土井 勝美
1
1近畿大学医学部耳鼻咽喉科
pp.32-45
発行日 2014年4月30日
Published Date 2014/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102805
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画像診断の狙い
慢性中耳炎,真珠腫性中耳炎の画像診断では,側頭骨の高分解能CT検査(high resolution computer tomography:HRCT)が有用である。通常1mmスライスで,水平断と冠状断の両撮影によるCT画像を評価する。罹病期間が長期化し病態が重症化すると,慢性中耳炎では肉芽組織により,真珠腫性中耳炎では真珠腫上皮および周囲に存在する肉芽組織により側頭骨の骨破壊が進行する。CT検査による側頭骨の評価が有用となる理由である。難聴発症の要因の1つである耳小骨病変に関しては,特に軟部組織が存在する中耳腔内では,CT検査による耳小骨の詳細な描出は困難な場合が多く,実際の手術時に確認することになる。一方で,含気の良好な正常の側頭骨であれば,耳小骨と中耳腔のコントラストが良好であるため,CT画像から3次元構築した耳小骨画像やヘリカルCT画像により比較的明瞭な耳小骨画像として評価できる。
慢性化膿性中耳炎,真珠腫性中耳炎に対して鼓室形成術および乳突削開術が適応となるが,顔面神経麻痺(顔面神経管の損傷),めまい・耳鳴(蝸牛・三半規管の機能低下),出血(S状静脈洞や高位頸静脈球からの大量出血),髄液漏(脳硬膜の損傷)などの合併症を未然に予防するために,術前にCT画像の十分な評価が重要になる。顔面神経の走行,中頭蓋底の硬膜下垂の程度,S状静脈洞および頸静脈球の位置,蝸牛・三半規管・内耳道周囲の中耳病変,そして中耳腔自体の発育の程度にも個人差が大きい。CT画像の術前の詳細な評価は,最適な手術法の選択,手術時のより慎重な操作につながり,術後合併症の予防におおいに役立つ。
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