特集 めまい—問診から治療まで
序
pp.701
発行日 1986年10月20日
Published Date 1986/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210186
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めまい患者の診察に戸惑いを感じるのが多くの耳鼻咽喉科医の偽らざる心境であろう。めまいの発症機構が複雑で,その診断には高価な特殊な機器と特別な技術を必要とする,しかも治療にははっきりとした決め手となるものが少ない,などといった種々の事情が重なっている。そしてめまい患者は一般耳鼻咽喉科診療とは異った次元で扱わねばならないという考えがあるように思われる。しかしどの疾患でもいきなり最新の機器を利用して診断し治療するということはない,患者の訴え,あるいは医師からのわずかな助言でその訴えの内容を豊かにすることで,診断が可能となり治療に移れるものが存在するのが一般の疾患の実状である。問診,視診,……という医療行為の通常の在り方で病気の内容が確実に把握でぎるものから,最新の診断技術を駆使しても全くわからないものまでいろいろであり,この点ではめまい患者もわれわれが日常的に扱う疾病も同様と思う。
日常診療で最も頻度の高い耳鼻咽喉科疾患からきわめて稀なものまで一応念頭になければ診断や治療は不可能である。教科書や参考書に助けを求め,知識を深めるためにも疾病との関連した事項を糸口として持っていることが必要であろう.めまいを起こす疾病で最も頻度の多いもの,少ないもの,耳鼻咽喉科領域から発生するもの,内科や脳神経外科領域からのものについていくつかの疾患名を念頭に置いて診断に当たらねばならない。耳性のめまいは左右の迷路のバランスの崩れが基本で,正常者でもめまいを起こすことができる。耳性のめまいは眼振が必発とすれば,眼振を指標にめまいの発現機構を探るのも興味深い。
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