特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
II.成因と病態
中耳機能と聴力像
船坂 宗太郎
1
,
堀口 信夫
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科
pp.793-799
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209847
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I.はじめに
近年,滲出性中耳炎はその頻度が著しく増加し,これに関する論文もまた膨大な数になっている。このため,ある種の混乱が生じている。たとえばこの種の疾患に対する命名も「serous otitis media」「secretory otitis media」「otitis media catarrhalis」「otitis media with effusion」「glue ear」など実にさまざまである。これらは,"おそらくは成因,病態生理が異なるであろうが,激しい耳痛・発熱を伴わず,また自然穿孔をもたらすことなく,中耳腔に滲出液ないしは漏出液の貯留をきたす耳疾患"に対していわば同意語的に使用されている。この結果として,臨床的,疫学的,実験的な諸研究の厳密な比較が困難であり,病態の把握,原因の追求,治療法の確立などがあいまいなものとなっている。
上記のことは,以下述べる中耳機能と聴力像についてもあてはまるものである。たとえば,貯留液の粘性度によっても聴力像は変わるであろうし,また液貯留をきたす病態の差異によって異なった聴力図が得られるであろう。現時点では,これらを微に入り細を穿って述べることはむしろ混乱を助長する恐れがある。そこで本論文では液の貯留を主点とし,これをもたらす病態生理をいわば俯瞰的に述べ,ついでこれによって引き起こされる聴力図を中耳生理と関連させつつ述べることとした。
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