特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
III.診断
鼓膜所見
天津 睦郎
1
1神戸大学医学部耳鼻咽喉科
pp.801-806
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209848
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I.はじめに
滲出性中耳炎(以下滲中と呼ぶ。)患者の鼓膜は中耳腔に貯留液をみるに至った病態と貯留液の存在によって多彩な像を呈する。中耳疾患の診断にあたっては問診に引き続き精細な鼓膜の観察を行うことが診断の第一歩となるが,滲中の診断においてもこのことに変わりはない。
滲出性中耳炎耳の鼓膜で貯留液の上界(niveau)を透見できる場合は診断が容易であるが,症例によっては貯留液の存在を示すniveauを観察できないことがある。この場合は他の鼓膜所見すなわち,鼓膜の色調の変化,厚みの変化,位置の変化(主として内陥の程度)などを考慮に入れて貯留液の存在を判断する必要に迫られる。聴力検査,ティンパノメトリー,X線検査などが有力な補助診断となりうることはもちろんである。
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