特集 頸部腫脹の臨床
II.診断・治療
甲状腺腫脹
甲状腺悪性腫瘍
伊藤 悠基夫
1
,
藤本 吉秀
1
Yukio Ito
1
,
Yoshihide Fujimoto
1
1東京女子医科大学内分泌外科
pp.827-834
発行日 1983年10月20日
Published Date 1983/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209679
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I.はじめに
甲状腺癌は単一の疾患ではなく,ほとんど健康な人と同様の手術予後を期待できる若年者のよく分化した乳頭癌から,あらゆる癌の中で最も予後の悪いものの1つといってよい高齢者の巨細胞性未分化癌に至る,数種類の病型を持った一群の疾患である。従ってその診断と治療に際しては,癌の病理学的な表現型と,その生物学的な進展様式を十分に認識して,各々の患者の状態を術前に正確に診断し,それに最も適した治療を行うことが大切である。
甲状腺悪性腫瘍は,形態と進展様式から,分化腫瘍と未分化腫瘍に大別され,分化腫瘍は,乳頭癌,濾胞癌,髄様癌の3種類に,未分化腫瘍は,巨細胞性または小細胞性未分化癌と,悪性リンパ腫に分けられる。さらに,乳頭癌といっても,分化の程度と予後にはいくつかの区別が可能であるので,なかなか診断と治療を一般化しにくい面がある。以上を念頭において,甲状腺悪性腫瘍の診断と治療をできるだけ典型例を中心に概説したい。
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