特集 耳鼻咽喉科MEの進歩
X.医用システム
細胞診断自動化システム:基礎的理論と実用化へのアプローチ
田中 昇
1,2
Noboru Tanaka
1,2
1千葉がんセンター研究所
2日本大学
pp.961-970
発行日 1981年10月20日
Published Date 1981/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209351
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I.細胞診断自動化の発想
1.癌のscreeningないしprescreening
耳鼻科領域では集団検診の対象になる悪性腫瘍病変検出は特に思いうかばないが,胃癌,子宮癌,肺癌,膀胱癌などは年齢,職業,地域などによるhigh risk populationに対して,集団検診を実施することによって,早期癌の発見率を高め,特に子宮癌や胃癌では死亡率を減少させる上に貢献している。この点から厚生省は集団検診を見直し,その強化に力を入れている。細胞診は特に子宮癌対策の第一次スクリーニングの方策に採用され,成果を挙げている。現在,集検,施設検診を含めて,婦人科検診は年間約350万件と推定されているが,上述の厚生省の集検対策,公費負担などによる推進で,1,000万件に達する日もそう遠くはないであろうと想像される。ところで,件数と細胞診スタッフ(細胞診指導医と,細胞検査士)の数は,現在の件数との間でバランスがとれているのであって,急増する細胞診件数に直ちに対応することは甚だ困難である.すなわち,対象が癌であるだけに,細胞診スタッフには高い精度が要求され、その要求にかなうスタッフは短期間でそう簡単には育たない。そこで,集検にあっては,大部分が陰性であるので(集検で子宮癌が発見される率は大体0.1〜0.3%程度),陰性例を自動化装置によってできるだけ除外し,装置が異常と判断した検体について,細胞検査士や細胞診指導医が,直接顕徴鏡で観察し,診定すれば,大量の検体を限られた人数で処理可能であろうとの発想は,だれしもが考える所であろう。これが細胞診自動化の発想の一つである。
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