特集 耳鼻咽喉科と感染症
III.各種感染症—診断から治療の実際まで
嫌気性菌感染症
中村 功
1
Isao Nakamura
1
1山口県立中央病院内科
pp.783-786
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209148
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I.はじめに
嫌気性菌というと,破傷風,ガス壊疽,ボツリヌス中毒の病原菌としてClostridiumはすぐ念頭に浮かぶが,それ以外の無芽胞嫌気性菌(以下単に嫌気性菌と略す)には考えが及ばない臨床医が多い現状である。ところが,医学の進歩に伴って感染防御能が低下した患者が増加した今日,従来は非病原菌ないし弱毒菌とみなされて臨床上ほとんど問題にされなかった嫌気性菌や,もともと家畜や植物の病原菌であったブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌による日和見感染が多くなり,細菌感染症の中で大きなウエイトを占めるようになってきた。
嫌気性菌は人の粘膜面には好気〜通性嫌気性菌よりもはるかに多数常在している1)ことを知れば,これらが内因感染症の原因菌となり得るであろうことは十分理解できよう。以下,嫌気性菌による感染症と,その診断,治療について概説する。
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