Japanese
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特集 耐性菌呼吸器感染症の現状と治療
嫌気性菌感染症
Antimicrobial Resistence of Anaerobic Bacteria in Respiratory Infecion
石田 直
1
Tadashi Ishida
1
1倉敷中央病院呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Kurashiki Central Hospital
pp.755-760
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902329
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はじめに
嫌気性菌は様々な感染症に関与しているが,特に呼吸器感染症においては肺膿瘍や膿胸などの化膿性疾患あるいは嚥下性肺炎の主要な起炎菌となる.これらの感染症において嫌気性菌はしばしば他の好気性菌や口腔内常在の微好気性菌と同時に検出される.
嫌気性菌は口腔内の常在菌であるため,喀痰検体をそのまま用いて嫌気培養を行っても意味がなく,起炎菌であることを証明するためには喀痰洗浄法などの特別な手技が必要である.通常は喀痰以外の適切な臨床検体(血液,胸水,経皮的肺針吸引液,経皮的経気管吸引液,気管支鏡下採痰など)を用いて培養を行うことが多いが,検体の採取から培養までの保存や運搬条件が不適切であると分離検出されないことがしばしば認められる.そのため臨床の現場においては,医師が嫌気性菌に対する認識を持って検体採取を行い,検査室に嫌気培養を要望することが必要となる.
嫌気性菌は,上記のように検体の採取や培養に工夫を要するため,あるいは医師の関心が薄かったために実際の感染数よりも検出率ははるかに低いものと考えられるが,本邦では今までこの菌種についての疫学調査は十分には実施されていなかった.しかしながら,近年嫌気性菌の薬剤耐性菌の増加,特にβ—ラクタマーゼ産生株の増加が報告されるようになり,耐性化についての分子遺伝子学的研究も進んできた.
本稿では,嫌気性菌の薬剤耐性の現状とそのメカニズムについて文献的考察を交えて述べ,対策を考えてみたい.
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