増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅵ.感染症とその検査法
14.嫌気性菌感染症
中村 功
1
,
国広 誠子
2
1山口県立中央病院内科
2山口県立中央病院中央検査部
pp.163-166
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902766
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はじめに
嫌気性菌感染症はごく普通に存在し,比較的軽症なものから難治性の膿瘍を形成するものや重篤で致命率が高いものまで多彩である.しかるに日常の臨床において嫌気性菌感染症はしばしば見過ごされている.こうなった主な理由として次の3点が考えられる.①多くの臨床医はClostridium属以外の無芽胞嫌気性菌に関する知識が乏しく,したがって無芽胞嫌気性菌感染症に対する関心が欠如している.②酸素に接触すると短時間に死滅する嫌気性菌を検索するための検体の採取と運搬に特別な配慮が必要である,③臨床的に重要な嫌気性菌を分離・同定する能力がない臨床細菌検査室が少なくない.
破傷風,ガス壊疽などの特殊な感染症を除けば,嫌気性菌感染症は粘膜面の常在菌叢を構成している菌群による内因感染症である.嫌気性菌感染症は通常複数菌感染で,1症例から2種類以上の嫌気性菌,あるいは1〜多種類の嫌気性菌と1〜多種類の通性嫌気性菌や偏性好気性菌(以下,好気性菌と略す)が分離されることが多い.1症例から分離される嫌気性菌の数は,嫌気性菌検査技術のレベルに比例して多くなる.栄養要求が厳しく発育が遅いPrevotella属やPorphyromonas属などの黒色色素を産生するグラム陰性桿菌を多数分離できるようになればしめたものである.
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