カラーグラフ 目でみる耳鼻咽喉科
肉芽性鼓膜炎
天津 睦郎
1
1神戸大学耳鼻咽喉科学
pp.708-709
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209136
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膿性耳漏に悩まされながら,長期の保存的治療でも症状の好転しない疾患に肉芽性鼓膜炎がある。本症は膿性耳漏を唯一の症状とし,慢性化膿性中耳炎として治療されていることが多い。そのため慢性中耳炎として手術を受ける例さえある。本症ては局所をよく観察すると深部外耳道から鼓膜表面にかけて膿汁の貯留ないし付着がみられ,膿汁を吸引あるいは清拭することにより鼓膜表面,時に鼓膜辺縁から外耳道にかけて1個所または数個所の肉芽の盛り上がりがみられる。鼓膜の他部位は長期の膿汁の貯留が刺激となって充血,肥厚をみることがあるが慢性化膿性中耳炎にみられる鼓膜穿孔は注意深い観察でも発見できず,中耳炎の存在に疑いを抱かせる。本症の経過に目を向けると,比較的長期間慢性化膿性中耳炎として局所治療,抗生剤の投与などを受けながら排膿の完全停止をみないことが多く,時には数年あるいは数十年治癒することなく経過する例さえあるといわれる。
一方,本症の存在を知って鼓膜表面あるいは鼓膜外耳道移行部の肉芽を顕微鏡下または拡大耳鏡下に小鋭匙あるいは小鉗子で丹念に除去し,鼓膜表面の上皮化を促すようタンポンを施せば,通常数回の治療で治癒することが多い。筆者は肉芽除去に皿メスを用いている。膿汁の細菌検査を行った上,抗生剤を投与するとなおよい。
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